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とんでもない最終話でした!
粗筋をこれまで同様にまとめるのは主にゃ、ちと荷が重いですが、
ここまで比較的丁寧に追ってきたんで、最後もやれるだけやってみましょう。
粗筋
美馬坂幸四郎の研究は“人間の本質を心に求めるのなら脳髄の他は
人口の入れ物に置換可能である”ということが根幹となっている。
つまりこの建物は美馬坂が作り上げた新しい人体のデザインなのである。
そしていま、この建物、入れ物の意識のあるじは久保なのだ。
久保の中にいる。
関口はこの事実を訊き、「久保になってしまいそうだ」と絶叫する。
「やはり君の魍魎が一番大きいようだね、関口君」と京極堂。
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ここまで京極堂の演説一辺倒で進んできた解決劇であったが、
久保が肢体を切断されてはいるものの、尚もこの建物を体として生きている、
という驚愕の事実の解明により周りも興奮し抑えがきかなくなっていた。
「どうしてやつはこんなことに!」と青木。
「久保もまた被害者である」と京極堂。
「彼が当たった通り物とはなんなんだ!」と関口。
「加菜子を見たんだな、匣に入った」と榎木津。
八月三十一日、久保は祖母の葬式に出席する為、夜行列車に乗った。
そこで久保は“匣の中の娘”加菜子を、見た。
誘拐事件で加菜子を運んだ須崎を焼却炉で殺し、
そして加菜子を運び去ったのは雨宮であったのだ。
雨宮は陽子の監視役として一緒に暮らしているうちに、加菜子を愛した。
雨宮は加菜子が研究所に運ばれ、処置の後どういう状態なのか知らなかった。
だから須崎の誘拐案には猛烈に反対した。手足を切断することが前提だったからだ。
須崎の生命維持方法とは、“腕だけを生かす”というものだった。
須崎はその生きた腕から指を切断するなりして誘拐の脅迫に使う計画だった。
加菜子を生かす為ならやむなし、ということで折れた雨宮であったが、
須崎に脅迫に使う以外の四肢は譲ってくれ、と頼み込む。
雨宮はその右腕と両脚を水葬するつもりだった。
加菜子が元気だったときに行きたがっていた相模湖に。
しかしこのとき予期せぬエラーが起きた。
雨宮が加菜子の四肢を乗せた(載せた)トラックの荷台の留め金は壊れていた。
その原因は八月十六日、福本がそのトラックに激突したからである。
そしてその落ちた箱入りの四肢は、その後久保によって起こされる
連続バラバラ殺人事件第一の被害者のものであると誤認されてしまった。
結局雨宮は加菜子の四肢を水葬で弔ってやることができなかったが、
彼は須崎の研究によって“生きている腕”に並々ならぬ愛を注ぐようになった。
須崎の研究母体はなんと研究所裏の焼却炉で、日中は木場がいる為、
雨宮は加菜子の“腕に会いに行く”ことが出来なかった。
そして迎えた三十一日。偽装誘拐決行の日である。
雨宮は木場らを病室まで案内した後すぐに“腕に会いに行った”
雨宮は腕と密会するだけに留まることが出来なくなっていた。
だから腕を連れ出そうとした。そこへ、加菜子の入った匣を抱えた須崎がきた。
雨宮は腕を入れるつもりだった匣で須崎を殴り、そして加菜子と逃避行の旅に出た。
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それを夜行列車で見たのが久保だ。
「ああ、生きている。なんだか酷く男が羨ましくなってしまった!!!」
遺作「匣の中の娘」は京極堂が指摘した通り、紛れもない久保の私小説だったのだ。
少女の箱詰めに悉く失敗した久保は喫茶店で頼子を待つあいだ、榎木津に会う。
そして加菜子の名を教えてもらう。その後頼子に研究所の場所を、
箱詰めの成功者の名を訊いた久保は、警察を逃れこの研究所にやってきた。
「やってきた久保を生体実験の材料にしたのか」
青木はようやっと美馬坂の行ったことの異常性に気付く。
「彼自身が望んだことだ。患者の許可は取ってある」
と美馬坂は平然と犯罪性の皆無さを訴える。
「雨宮、久保、須崎、頼子と母君枝、殺された少女とその家族・・・
あんたは多くの他人の心に魍魎を植えつけてしまった」
私はあんたにひとつ忠告をしておきたい、と京極堂は美馬坂を睨む。
「あんたの究極の目的は脳を除くすべての部分を機械に取り替えて
永遠に生きることでしたね」
「醜く衰えた肉体など所詮乗り物に過ぎん」
「あなたはそれほどまでに醜くなった絹子さんが嫌だったのですか?」
美馬坂は妻絹子の病気を治す為、
それまでの研究を捨て機械人間の研究に没頭し始めた。
美馬坂は日に日に肉体を憎悪し、機械人間に執着した。
事実のほぼ全容を知った木場は、美馬坂への怒りが再燃する。
殴る。陽子の止める声も訊かずに殴る。
最後の一撃を見舞おうとしたそのとき、
陽子が思いもよらぬ言葉を叫ぶ。
「加菜子は父の子なのです」
「言わずに済めば、もう少しでこの人の魍魎が落ちたのに・・・」
何か後悔したような口ぶりの京極堂、泣く陽子、茫然自失の木場。
「私は父を母から奪いたかった」
陽子は日に日に醜くなっていく母が堪らなく嫌だった。
難病は父の所為ではない。治せないのも父の所為ではない。
それでも美馬坂は献身的に母に尽くした。なのに母は美馬坂を詰り蔑んだ。
美馬坂の気持ちや言動は母に一切届かなかった。母の前では美馬坂は奴隷だった。
だから陽子はそんな父を慰めてやりたかった。
妊娠しているのが判ったときは嬉しかった。
何が何でも産みたかった。でも柴田弘弥の子にはしたくなかった・・・。
「加菜子は私が愛した最初で最後の人、美馬坂幸四郎の子です」
事件の発端は美馬坂の歪んだ研究意欲と陽子の禁断の愛情だったのだ。
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感想
一応事件解決の場面まで粗筋書きました。
すいません、この先はとても書けそうにありません。
主の観ていた今期アニメでは「魍魎の匣」がアンカーでした。
うん、08年の〆として非常によかった。
作画も演出も素晴らしかったと思います。
ただ原作既読の悪い性ですが比較するとアニメ版は
映像による衝撃や美しさ、グロさこそあったものの、
小説のじわじわくる後味みたいなものは欠けたかな、と。
まあ勿論原作の百ページに詰め込まれたもの全てをアニメ化、
なんてことは望んでいないし、それはまず、無理なので
主は満足して終わることが出来、よくここまで纏め上げたなあと
ちょっぴり驚いたり感謝したり、といった気分です。
原作未読のかたの感想が激しく気になりますね。
主からしてみればキーマンの雨宮が突如でたなあとか、
榎木津はなんだったの?って感じも少しありました。
まあ最終回までに雨宮のエピを入れることはほぼ不可能だし、
榎木津の自殺阻止ストーリーをあの尺に組み込むことも不可能でしょう。
全体的に駆け足な感じはあったけど、それが逆に切迫感の演出になっていて
京極堂がのんべんだらりと演説するよりは遥かに引き込まれました。
謎解きの順序などの構成についても一貫してかなり計画的で、
最終回これまでにばら撒いた伏線がすべて辻褄が合ってよかった。
(焼却炉やトラックの扉の故障など)
それとは逆に削られたものも少しあったり。
これがたぶん原作の後を引く感じの愉しみに繋がると思うのですが、
アニメ版は原作の核部分を非常に巧く抜き出し、強調していたなあ
という印象を受けました。だからミステリものでは反則である
所謂“後だし”的な解決にならなかったので、収まりがよかった。
画、演出については本当に最高でした。
揺らめく久保の欠損した指や、箱入り加菜子、歯欠けの幼加菜子、
雨宮が加菜子と手を繋ぐシーン、関口のぶっ壊れ具合などなど。
関口君は本当に迫真の壊れ具合で、見事、としか言いようがない。
「おべんとう・・・」とか「匣の中の娘」の一文を叫んだり凄まじかった。

見事な演出にしっかり付随して声優の演技も素晴らしいところが
「魍魎の匣」のいいところですよね。
関口、陽子、京極堂、久保と完璧な演技でした。
しかし主はこの面子を差し置いて一番の演技をした、と思うのは増岡ですね。
地味だったけど、彼の演技には感動さえした!見事な脇役ぶりでした。
それと木場修が最後の最後に粋っぷりをみせつけましたね。「悪者、御用じゃ」
あ、あと粋といえば研究所設備のおじちゃんですが、
彼の自殺は何故切腹に書き換えられていたのでしょうかw
スタッフの中に切腹マニアでもいたのかもしれませんね。
あのシーンの榎木津の「やっ」には萌えそうにすらなったw
久保の匣内部での意識と噛み付く為に飛んだような演出もところもよかった。
古谷の声が久保というキャラを引き立ててましたよね。
匣に入ったことを酷く後悔し、美馬坂を恨んでいる感じがすごく伝わってきた。
演出的にもBGM的にも一番の山場を研究所内木場が陽子に刺されるところにして、
屋上での出来事はもはや事後といった感じの構成、演出も後味よかった。
しかしあの花火は一体・・・。久保のところまではまあよかったんだよ。
ああ久保は宇宙の塵粕となったのか・・・とね。
でも連発なんだもの。どっから出てきたんだよ!
木場の見せ場が打ち消されちまったじゃないか。
それと最後のエピローグ。
結局魍魎とはなんだったのか、という話はかっ飛ばすくせに
福本の新しい就職先の話は組み込むスタッフの愉快さに脱帽。
あと“真っ黒い干物”の映像化くるかと思ったが・・・残念。
それと欲張りだけど最後に無理やりでもいいから
加菜子と頼子が幸せそうに踊ってる天界でも描いて欲しかったな。
結局あの二人のじゃれ合いはOPと1話だけとなってしまった。
あと順序変わったけど事件の根幹である陽子禁断の愛ですが、
原作ではかなり、かなーーりショックを受けたんですが、
アニメでは映像化が仇となりあんまりショッキングじゃなかった。
原作では“年齢ほど歳とってない”っていう表現されてたから
妄想するとどうしてもロリっぽくなってたけど、
アニメでは歳相応って感じだったしね。
それに美馬坂の「私も陽子を愛した!」というくだりも
カットされていましたね。まあ別にいいか。
人の生と死の境界はなにか、なんていう話題は
年始早々重過ぎるし、主には書けそうもないんで、パス。
とまあこんな感じで最終話感想終了ってことで以下は総括。
思い返せば本作は今期一番期待していたアニメだったので、
最終回がキレイに、且つ最後まで丁寧に作られていて非常に満足のいく作品でした。
ただやはりミステリホラーものの原作を知っているということで、
知っているからこそ面白いと感じるところは勿論あったけれど、
知っているから興ざめしてしまったというところもあったのも事実。
最近で言えば「ひぐらしのなく頃に」の謎めいた部分に興奮できない
といったような感じに似ていたかな。
それでもやっぱりアニメ化万歳でした。頼子デザ最高だぜ。
京極の原作、原画CLAMPにマッドハウス、そして豪華声優と
主はかなり好みの組み合わせで、なんというかウハウハでした。
ストーリー構成については言うことはありません。
いい意味で、これがぎりぎりの構成だったのではないでしょうか。
複雑すぎず、かといって当たり障りのないという感じでもない。
京極堂の座敷で2話使ったのがその証拠です。
あれは今思えばかなり大胆ですね。
あの頃は本当に終幕を迎えられるのか不安な面もあったり。
ブログに感想を書くにしても、ネタバレしないように気をつけたりと
なかなかスリリングで難儀でしたが、今期唯一毎話感想書けたのは
やはりこのアニメへの思い入れでしょうか。
「魍魎の匣」のいいところは殺人犯が誰だ、トリックがどうだ、
というのが主題ではない、というところでしょうか。
動機はやや複雑怪奇なものもありますが、トリックなぞはいたって単純。
それよりも事件がきっかけで、もしくは事件以前から魍魎が湧いたというところに
焦点を当て続けることが他のミステリと違ったところだと言えます。
結局アニメ版では魍魎とは何ぞやというのを
京極堂の台詞から訊くことはできませんでしたが、
久保の自らを魍魎の匣だ、と言い切ったことであれが魍魎については
一応の結末であり答えだったのかな、と思います。
いずれいつの日かスタッフ再結集して
他の京極作品のアニメ化とか期待しちゃいますね。
兎も角「魍魎の匣」は大成功だったんじゃないかな、ということで
スタッフさん、声優さんおつかれ様でした!