粗筋
一発の銃弾が窓ガラスを割り、会議の場には混乱がもたらされた。
クロウディアはアイザックを撃ち、これが一連の事件の首謀者であると主張する。
事件から数日が経ち、クロウディアが提出した報告書に不備はなく、彼女は一度は危機に陥ったものの、しかし、事件をきっかけに才覚をマグワイヤから認められる結果となった。
一方、ツヴァイはキャルとの生活を通して忘れていた生活を確実に取り戻しつつあった。玲二の助手になりたい、そして玲二といつまでも一緒にいたい、キャルのその切なる願いは彼にツヴァイから玲二に戻りたいとすら思わせる。
次回へ。
感想
ほんとよくできたシナリオだなあって思う。無感動な暗殺者最高、出来れば人間味を掻き消したシナリオを! とこれまでのほとんどで望んできた私でさえ、今回キャル、ツヴァイを中心とした人間臭い展開には心動かされざるを得ない出来だった。
ツヴァイがキャルに感化されてきているのは以前から描写されてましたが、今回はその集大成を爆発させたという感じ。幼くて無邪気で天才肌。キャルはけっこうあっさりと暗殺者になるんじゃないかなんて思ってたけれど、予想外に粘る。というよりツヴァイが必死に食い止めている感じか。二幕が始まって以来ツヴァイはまた組織の飼い犬として奮闘してきたわけですが、キャルの依存を受けたことで、また脱組織というか脱暗殺者への野望を抱くという大枠の流れはアインのときと同じですね。ただ以前にもまして組織にがんじがらめで裏社会に染まり切ったツヴァイが、どうやったらキャルのもとに“戻る”ことが出来るのか正直想像もつかない。まさか再び逃避行なんて浅はかなことするとは思えないけど、今回流した涙や「ずっと一緒だろ、俺たち」と言ったツヴァイから強い意志を感じるだけに今後の行動がいろんな意味で怖い。
展開は前後しますが、ツヴァイとリズィが酒場で会話するシーンは、ツヴァイとキャルの会話と比較するとほとんど対比的な方向の会話ですね。ツヴァイがキャルに道を外さないように食い止めているのと同様に、リズィもツヴァイが暗殺者としての道を外れないように考えを促しているという点では同じ。でもベクトルは逆で、面白いのはリズィが妙に出来た人間にみえるところ。彼女は何故あんなにも揺らがないのだろうか。まさに組織の末端として特段上昇志向を持たず、淡々と仕事をこなしているという彼女のスタイルは一見ツヴァイのいう“死んでいる”状態と同じように感じるけれど、そんな風には見えないところが不思議。まあツヴァイの場合は望んでこの世界に入ったわけではないし、大切な人であるアインのその後も不明ってことで揺らぐのは当然だけど。でもそういう要素抜きに同じ殺し屋として見るとリズィの揺るがなさは魅力的に見える。中心人物ではないけれど脇役として二幕に入ってからはかなりいい味出してます。その姉貴的ポジションはZでいうアポリ中尉みたいなもんでリズィが死んだらかなりしんどいかもしれん。
そんな作品的にも組織的にも縁の下の力持ち的ポジションを一手に引き受けるリズィは展開的にもかなり便利屋な扱いで、以前にはアイザックに脅され、今度は梧桐組に脅される結果に。このシーンはキャル&玲二のしくしくぽかぽかな展開からかなりギャップがあり、「やっぱりもう抜け出せないよ、ツヴァイ」とそれはもう暗澹たる気分になるには最高の展開&引き。このあたりのテンションのアップダウンも何か計算された精緻さを感じる。展開的には明らかに負のほうへ引きずられていってるんだけど、その泥沼な感じに躊躇なく持っていくところが「スタッフやるなあ・・・」と妙に興奮してしまう。
で、その引きでちょいと出てきた(私の)愛しのアインだけど、彼女の見下ろす先に何かが山盛りになってたのはなんですか、と。まさかリズィとかの死体じゃあるまいなとかなりびびったんだけど、アインが殺した人間をいちいち山積みにするなんてことないよなあと思いなおし今に至る。まあなんにせよ後ろ髪が伸びたアインも可愛い。前回今回と仕事仕様の黒ずくめな格好で登場のアイン、展開的に今後私服姿を見ることは出来るのかかなり微妙ですね。もし私服姿を拝めたとしたら是非新しい衣装で! というか黄色いチャイナドレスの上みたいなこれまでの服はツヴァイに穴あけられちゃったんだし、違う服じゃなきゃいろいろとおかしいw
格好といえば注目すべきはキャルのメイド仕様の猫耳。猫耳メイドってどこの国の文化だよとかそんなことはさておき、麗しい萌えの精神を理解してるキャルに驚きw アメリカにおいて猫耳メイドがもともとあった文化なのかそれとも日本からの逆輸入なのか知りませんし、原作にあったかどうかも知りませんが、明らかに作風からは外れた演出ですよね。こういった狙って外した感じをさらっといれるのも前回の演歌BGM同様、真下監督流のギャグなのかもしれません。勿論好感ですよw それと前回記事で民族性に触れたコメントを頂いたのですが、ツヴァイがさらっと「メイドだ」と言ったあたりに日本人のアングラな精神を垣間見た気がしましたw それとパンツ&サングラスで日光浴をするツヴァイをみて、ああ日本人はこういうシーンがとことん似合わないな、と。アイザックやクロウが同じことをしててもきっとなんの違和感もなかったと思うんです。でもツヴァイの姿はいくらホストっぽい身なりになったとはいえ、どうみてもパンツ一丁の変態にしか見えないw ああ悲しきかな日本人って感じですね。
でもまあ本作の変態の筆頭といえばサイスなわけで、前回謎だったアインの撃った一発の銃弾の意図は、会議を掻き乱すためだったわけだ。サイスにとってはあくまで梧桐組も駒であり、いまはクロウに対して復讐計画進行中って感じでしょうか。つか前々回のホテル一室殺人事件でツヴァイ写真撮られてたとか。サイスのやり方が相変わらず陰湿っぽくて笑った。志賀は梧桐組のブレインでなかなかのキレ者だろうと思っていましたが、やっぱり駒でしかないようだ。まああの写真見せられたらツヴァイを疑わざるを得ないし、サイスのほうが一枚も二枚も上手だったってことでしょう。
さて、物語はおそらく2幕終盤に差し掛かっています。ストーリーの大枠は判り易いけど、キャラそれぞれの心情は複雑って感じで絶望感は拭えそうにない。ここまできて明確な目的が判らないのがサイスだけとなったような気がします。現在絶賛復讐中のサイスですが、彼はその先に何を求めているのでしょう。一幕での彼の振舞からはあまり組織への執着を感じなかったため、いまクロウを失脚させようとしていることですら少々驚きですが、一応は彼にも上昇志向があったと考えてもいいんでしょうか。一幕ではラスボスになったサイスですが、彼はまた展開に大きな影響を与えるキャラになりつつあり、彼の言動次第でアイン、ツヴァイ、キャルはさらなる悲壮感をまとうことになるでしょう。サイスはこのマフィア乱世に何を求めているのか、そういった点にも注目ですね。
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