感想
前回までのあらすじと都での生活の序章を見せたAパート。嫌々ながら仕方なく都へ出てきた繁丸。そんな繁丸の陰気な気分を紛らわすためか、前回に続きコメディは満載で、今回は大いに滑っていたと思う。ダイバスターのBGMとともに牛に征服!? と繁丸が一人で大騒ぎするところは出だしだっただけに結構萎えました。どうしても堺さんの柔和で真面目そうな顔が頭を過ぎり、「あの人がこんな演技してるのか」と勝手に虚しくなってしまう。他の声優さんがやったら虚しくならなかったのかと言われれば、たぶん虚しくなっていただろうけど、声優を本業としている人間でもないし、声優以上にメディア露出が多く、個人的に真面目な人っぽいなあという印象を抱いていた堺さんだからこそ、虚しさは倍増したと思う。堺さんはきっと一生懸命にギャグ演じたと思うのだけど、皮肉なことにそれが痛々しい。南無。
一方で都が繁丸にとってくだらないところだというのはしっかり伝わってきたと同時に、それはある意味現代の都の風刺にもなっていたように感じました。繁丸が田舎もんとバカにされ、写メをパシャパシャ撮られ、そして叫んだあと、周りに誰も人がいなかったあのシーンは何を伝えたかったのか気になります。写メを取られ囲まれたのは彼の妄想、自意識過剰だったとも思えなくもない。自分に自信が持てないとき、やたらと周りの声や評判を気にしてしまうのは過去も現代も変わらないのかなあ。それに今の世で考えてみれば、都は田舎者が大挙して押し寄せたからこそ都であるような気もするし、インフラが整っていなかった大昔に比べれば、都会の人間も田舎の人間も明確な住み分けはないでしょう。また都会人は誰が田舎者をちゃかしていられるほど暇ではなく、基本的に他人には無関心が大半である。このシーンはそんなことを表現したかったのかもしれませんね。
個人的に荒木監督の本領が発揮されたのは繁丸と彰子の無意味なバトルシーンから。「え、なんでバトル?」と思う暇もなく絵の動きに圧倒され、「おお!」と盛り上がったと思ったら「エイエイエイエイ!」とすかさずコメディリリーフ。彰子の可愛らしい声と、明らかに冷めきって冷静な繁丸の二人がとても噛み合っていた面白かった。
注目の首遊びは予想通りミュージカル仕立。「向かうべきは桜の森」という歌詞の部分を繁丸が口パクしてましたが、何か意図があってのことだったのでしょうか。
繁丸がナースだか巫女さんの首を取ってくることを拒否し、それまで萌えッスとか言って巫山戯ていた彰子がスッと素に戻ったシーンもとてもよかった。髪を掻き上げながら「なんだって?」とにやり笑う彰子の妖艶さには正直やられました。「お前も飛んだ弱虫ね」の「ね」の発音もうまく説明できないけどたまらなくよかった。また絵的にも面白く、雨に濡れない屋敷の縁側に彰子、雨に濡れながら地べたに繁丸、と明らかな力関係を示すようなその図で反抗する繁丸がひどく滑稽でした。繁丸も彰子、双方が依存しあい求めあってはいるものの、明らかに上手な彰子。女に惚れた男のってつくづく無力だなあと。
ラスト、桜の森での繁丸の発狂は、黒バックに白字テロップと悪名高き蒼天航路最終回を思い出してしまってちょっとうわあと思いました。が、首を絞められた彰子の目の移り変わりやボキっと折れた骨の音、眼球の上に桜の花びらをひらりと乗せた無残な死に顔等ラストを飾るに相応しい緊迫感。解釈については、私にはそういうものだとしか言いようがないですね。単純に考えて、満開の桜の森の下で人を殺すという図は恐ろしいものでした笑
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